84人が本棚に入れています
本棚に追加
「ま……まさか、今朝ぶつかったことでやっぱり慰謝料払えとか……」
我が家には本当に金がないんです。それはもう、あった分だけユキのデート代に費やしちゃうから。マジで僕、彼女にべたぼれだなぁ。この先、大丈夫だろうか。
「違うわよ。マネージャーにTELするから十円貸して」
「やっぱり金取るんじゃないか。まあ、十円だからいいけど。あげるよ、それくらいなら」
そう言ってポケットから財布を取り出すと、十円を彼女に渡す。
どうせ、彼女と会うことなんてこの先一生ないだろう。生ライブとかあまり好まないし。そもそもテレビ事態あまり見ないから。
「それくらいとか言わない方がいいと思うよ。たかが十円、されど十円。はした金でも大切にしないと」
和束は受け取った十円玉をまるで大切な宝物を扱うかの如く、ズボンのポケットにそっとしまう。そうして、不可解なことに今度は袖口を掴んできた。
だからさあ、と彼女は話を続ける。
「連絡番号教えて」
はにかむ彼女は、えへへと何か誤魔化すかのような笑いを浮かべる。
最初のコメントを投稿しよう!