嫉妬

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取りあえず和束に携帯番号だけを教えて、メアドは後で送ることになった。 夜空からの月明かりに照らされながら、僕たちは再びチャリを走らせる。と言っても漕いでいるのは僕で、和束は後ろに座っているだけなんだけどね。ちなみに、二人乗りは犯罪です。絶対に真似しないように。 廃工場から傾斜の緩い上り坂を少し上ると、隅に置かれた公衆電話を発見し、自転車をその傍に留める。和束は、よいしょ、と降りるとそこから一歩も動こうとしない。僕もそれに同調して帰ろうとしなかった。こうして、二人の間を静寂が支配する。 そんな中、名残惜しそうにさながら独り言のように呟いた。 「……また、会えるよね?」 「当然だよ。だって、友達だろ」 素直にそう述べてしまう自分が少し恥ずかしかった。その語尾に、けど頻繁に会うのは難しいだろうな、と付け足すかを逡巡した結果、自分の心に留めておくことにする。言わずとも彼女もそれくらいわかっていると思ったからだ。 「じゃあ、ここで。さよならだな」 「そうね。また今度会いましょう」 その返しにうっときてしまう。そして、僕は敢えてそれを聞こえなかったかのように受け流し、一度も後ろを振り返ることなく家に帰った。 また今度、か。あるのだろうか、また彼女と会える日なんて。 もともと住む世界が違う彼女と僕。 もしかしなくとも、和束と会う日は遠い未来の話になるだろう。だから、それまでは絶対に忘れない。最後に見た彼女の晴れ晴れとしたあの顔を。
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