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夏の朝は蒸し暑い。体にねっとりとした暑さが絡みつき、今にもクーラーのかかった教室まで走り出したいくらいだ。
だがそうもいかないのが現状。電信柱から顔をひょっこりと出して行き交う生徒を絶えずチェックする。
現在、校門が確認できる位置に僕は隠れている。本当なら堂々と学校前で立っていられたらいいのだが、あいさつ運動と間違われたらたまったもんじゃない。人見知りと自覚済みのこの僕が、いちいち学校に来る生徒に挨拶をしなければならないのだ。
そんな理由で電信柱の陰にいるのだ。ユキと一緒に登校をしたことがないのでいつ来るのかもわからず、かれこれここで三十分待っていた。忠犬ハチ公の称号を貰ってもおかしくないレベルである。なにせ、朝練を日課とする野球部より早いのだ。
それにしてもまだ来ないのかな。もしかして今日は休みだったりして。服の襟首をパタパタと上下に動かして嫌な想像をする。
しかし、いくら成績優秀の彼女でも講座を二連続休むことはないだろう。そんなことで目立つのは嫌がるはずだ。
更に待つこと五分。一人違うオーラを背負った女子がトボトボと歩く姿が確認できる。どう見ても、どの角度でも、あれは絶対にユキだ。長い黒髪を揺らして、挙動不審に周りを見回している。
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