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どうしたんだろう? と暫く眺めていたらユキは校門前で一旦立ち止まる。そして一回転、周りを見渡した。
何かあったのかもしれない。だったら助けにいかないと。電子柱から離れて彼女の下に急ぎ足で向かう。
「……ど、どうしたの?」
昨日の事が糸を引いてつい声が震えてしまう。しかしユキの反応は素早かった。それはもうマラソンランナーのスタートダッシュ並みの俊敏さである。
目がしっかりと合うと一瞬だけ彼女が嬉々しているように感じられた。気のせいだとは思うが。
「何か探しているなら一緒に探すけど」
昨日の事が尾を引いているのは理解しているが、それとこれは話が別だ。困っているなら不和が生じている時でも助ける。まあ、ユキ限定ではある。
「……いい。見つかったから」
僕だけに聞こえる声で呟くと、こちらに背を向けて颯爽と去ろうとする。そんな彼女を慌てて呼び止める。
「ちょっと待って。あの、昨日の事で」
「それは放課後に話しましょう」
顔を向けようともせずにぴしゃりと跳ね除けられる。有無も言わせないような強い語調に、僕は押し黙る他なかった。
やばい、僕が考えていた以上にユキが怒っているぞ。てっきり、昨日はただの友達だからとかで終わるのかと思っていた。
ユキの後ろ姿が見えなくなるまで、人の邪魔になるのも顧みず茫然と立ちすくみ、ただただ校門前で自己嫌悪に陥っていた。
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