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常時ならユキから話すのを待つ僕だが、今回だけはこちらから話さなければならないようだ。
「昨日の事だけど、あの女性は困っていたから助けただけだよ。ユキが考えているようなことは絶対にないから」
「私が何を考えているというのだ。ユウが別に誰といちゃこらしてようが私には一切関係ない」
どうやら完全に完璧に拗ねているようだ。さっきからこちらと反対方向ばかり見て、目を合わしてくれない。
「ならいつも通りに話そうよ」
「いやだ。何だかそっちを向きたくない」
「……やっぱり怒ってるんじゃ」
「だから怒ってない!」
唐突に振り返ったユキが切れ味鋭い視線で怒りを露にする。僕は思わずそれに息を呑む。
別に睨まれたから驚いているのではない。彼女の黒水晶のような瞳から透明の雫がポロポロ溢れ出ているのだ。
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