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てっきり泣くのは僕のほうだと思っていた。
女の涙は最強の武器だと聞いたことがある。――ああ、本当だ。
「ごめん……僕が悪かった」
「だ、だから、怒ってないの。これはユウとは関係ない」
涙を袖口でごしごしと拭うが止まる気配がない。
『ユウ。一人にしないで』
過去に彼女はそう言っていた。もしかしたら、僕と和束の姿を見て不安になっていたのかもしれない。
「ごめん。けどもう大丈夫だよ。僕はちゃんとここにいるから。だから何も心配しなくていいんだよ」
自然と体が動いて彼女の背中に手を回していた。柔らかい彼女の身体からはほのかにバラ香りがする。
「……私の事好きか」
彼女は確かにそう訊いてきた。そよ風に吹かれても消えそうな声で。
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