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だからこそ、彼女が欲しいというものはなんでもあげる。
「……だったら、行動で……」
電波が悪くなったラジオの如く言葉が途中で途切れて聞き取りにくい。
「どうしたの? もう一回言って」
「だったら、行動でしめしなさい」
顔をリンゴ飴みたく真っ赤に染めた頬からは、今にも蒸気が上がりそうである。
ユキは目をつむり顔を上に持ち上げると、口を僅かにすぼめる。
こればっかりは恋愛経験のない僕でも理解できる。つまり……そういうことである。
回していた腕を解いて、彼女の両肩に乗せる。
昔の偉人の言葉を引用して言うなら『これはリア充にとって小さな一歩だが、僕にとっては大きな一歩である』だな。
なんて気の紛れることを想像しながら、ゆっくりと彼女の唇に僕のそれを近づける。
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