1.ふたり

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 僕の教室は三階にある。二年八組の教室だ。去年が四階だった分、一つ下の階になり得した気分になれる。もちろん、三年生になれば二階の教室のどれかになり、益々得した気分になるだろう。  いつものように、吹き抜ける風の如く黙って教室に入る。  彼女との約束では、ここでも挨拶しなくてはいけないらしいが、そこまでの勇気を僕は持ち合わせていなかった。  クラスメイトも僕を気にする様子はなく、友達と話し続ける。  自分の席に座ると、朝のショートホームルームが始まるまで、家から持ってきた本を目に通していた。
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