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手を伸ばしては直ぐに引く。また伸ばしては引く。
それを繰り返していると、背後から聞き覚えのある清廉されつくした声調が僕の鼓膜を震わせる。
「何している? 腕の運動か?」
振り返る。そこには変わらない彼女――
「――ユキ」
が、腰に手を添えていた。
長い髪が腰に絡み付き、頼りなくゆらゆらと揺れていた。
長い睫毛のお陰か、目が大きくパッチリとしている。清んだ瞳は、真っ直ぐに僕を捕らえて放さない。
「いや、ちょっとね」
彼女の眼光にあてられて、思わず凄んでしまう。
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