1.ふたり

28/32
前へ
/148ページ
次へ
 それなら、もうこの際嘘をついちゃおう。夏休みまで用事があるから会えないとか、家で猛勉強するとか言っておけば良いだろう。 「驚愕してる所悪いけど、明日から夏休みまで、僕はここにこれないから」  床に指を指して、『ここ』とは何処なのかをジェスチャーした。  数秒待ち、反応なしなので、腰を浮かしてもう一度同じことをリピートしてみる。 「何だとッ!?」  二回目でやっと聞き取ってくれたようだ。露骨に驚かれる。 「どうして夏休みまでこれないんだ?」  落ち着き払い、彼女は感情を押し殺すような声音で疑問を口にした。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加