2.以心伝心

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 それを聞いて、犬養さんが恭しく頭を下げた。 「そうでしたか。お時間をとらせてしまい申し訳御座いません」  顔を上げると「さ、中へどうぞ」と犬養さんを先導する。  僕は、ユキに引きずられるようにして、立派としか言いようがない屋敷へと吸い込まれていった。  この時、黙考していた事がある。あの日言っていた言葉だ。 『私とリア充しよう』  彼女は、人の目を吸い付けるような美貌を持っている。  あくどい言い方になるけど、お金だってある。何より犬養さんのような善意に溢れた人までいる。  どうして彼女は、僕に声を掛けたのだろう?  不思議でならない。
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