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僕が彼女の髪に触れるなんて恐れ多いが、今だけは許して欲しい。
壊れてしまわないように優しい手つきで彼女の髪を撫でる。
そして、口にする。伝えられなかった言葉を。伝えたい言葉を。
「ユキと初めて会ったあの日から、ずっと言えなかったことがあるんだ」
光に反射して輝きを放つ彼女の涙が、僕の足にこぼれ落ちる。
温かいそれは、彼女の気持ちを真摯に訴え掛けてるような錯覚を僕に起こさせる。
彼女はずっと苦しんできた。だから、嘘を付かないで欲しかったのかもしれない。
せめて、僕だけは信頼したかったんだ。
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