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僕と真冬はお互いの両親に元々親交があったため生まれた時から当たり前のように一緒にいて、まるで家族のように過ごしてきた。
いつでも振り向けば、隣には真冬がいた。
彼女は生まれつき病弱で、中学生くらいまでは日常生活すら満足に送れずにいつも僕が面倒をみていた。
そうした理由もあって生まれた時からそれが僕の日常であり、疑問を抱くことすらなかった。
周りの友達にしたって、真冬の体が弱いから僕が手伝うために一緒にいる。
そんな風に認識していた。
だから、同じ高学に進学して真冬の容態が安定してきて僕らが一緒にいることに特別理由がなくなった時、それは起きた。
入学早々、僕と真冬は同級生たちに夫婦みたいだとからかわれ始めたのだ。
おまえら付き合ってんだろ。
どこまで済んだんだよ。
結婚式には呼んでくれよ。
小学生のような稚拙な内容と大人のような悪意のある嘲笑。
突然の反応に、僕は何がどうなってそうなったのか全く理解できなかった。
だから僕は真冬を見た。
真冬は恥ずかしさを耐えるように俯き、僕の制服の裾をぎゅっと掴んでいた。
そこで僕は初めて思い知らされた。
同級生たちにとって僕と真冬が一緒にいることは、普通ではなかったのだ。
年頃にもなれば男と女を明確に意識し出して距離感を気にするようになる。
今までの僕らは病弱な女の子とそれを支える幼なじみとしか認識されていなかったのだ。
決して、男女としてではなく。
それは今までの常識を否定されたような、ひどくショックなことだった。
多分、真冬もそうだったんだろう。
病弱で周りに引け目をいつも感じていた大人しい彼女が、傷ついていないわけがなかった。
しかし、それでも彼女は僕の制服の裾を離そうとしなかった。
真っ赤な顔で俯きながらも、そこにははっきりとした決意があった。
いくら同級生たちに比べて男女関係に疎い僕だって、その行為の意味がわからないほど鈍感じゃない。
もっと言ってしまえば、僕だって同じ気持ちだった。
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