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「オイ、ツヴァイ。まだ橋抜けねェのか?」
運転席までもが開放的な屋根のない迷彩色の軍事用トラックの上。天候は雲一つない晴天。眼下に広がるは広大なスカイブルーの海。荷台に乗る黒のタンクトップに迷彩のカーゴパンツを身に着けた黒髪の青年、フェイトが気だるげに言葉を投げかける。
「まだまだや。なんや急かすなー」
運転席に座る赤い長髪を後頭部で束ねた糸目の青年、ツヴァイは何度目かのその言葉にうんざりしたように返答した。
「こいつが腹ァ空かせてごねてんだよ。何とかしてくれ」
「パン乗っけてなかったか?」
「ああ、そうか、あったな」
メンバーの中で一番の大飯喰らいである歌姫、ティアに麻袋に入った紙袋からレーズン入りの巨大なパンを口に突っ込んでやり、フェイトは助手席へ戻り慎ましげなフロントガラスの枠に両足を乗っけてくつろいだ。お世辞にも上品なスタイルとは言えない乗車姿勢である。
「少しは緊張感持たないかんぞー。大陸間移動中は危険なんやからなァ」
「わかってるっつうの」
何の因果かこのメンバー全員、絶賛指名手配中である。帝国に限ったことだが。
「つか、危険だってわかってんのにこのオープンな車両はどうよ。空から丸見えだぜ」
「使える車両がこれしかなかったんやて。ほとんどの軍事車両は忌人大量発生の件で出払っとったからのお」
「ッは、迷惑な話だなァオイ」
「その件に一枚噛んどるのはお前やぞ……」
「アホか、俺じゃねェ。全部あのクソ軍事国家が悪ィんだよ。世界がどうなろうと知ったこっちゃねェが……」
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