序章

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その山に架かっている橋に、独りの少女が佇んでいた。 少し高めの身長、細い手足、頭には帽子を目深にかぶり、その表情はわからない。 一見すれば少年と見間違われる可能性があるが、かろうじて見える胸の膨らみが、女であると物語っていた。 不釣り合いなのは、少女が肩から下げている細長い筒だけだった。 「今さら、何を怖がってるんだろうなぁ。僕は」 そんな少女の呟きは、空に吸い込まれて消えていった。 その時、今までとは比べ物にならない程の強風が吹き、少女の体躯は空中に投げ出された。 落ちていく少女の表情は、どこか嬉しそうだった―――――
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