プロローグ

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―― 「ちょっと、待ってったら!」 「早く来いよ。日が暮れちゃうぞ」 山道を歩く男女が賑やかに通り過ぎる。恋人同士だろうか、足早に歩く男性の後ろをブツブツと文句を言いながら女性が追い掛けた。 「大体さぁ、キャンプには時期が早いでしょ?まだ春だよ。寒いじゃない」 「誰もいない時の方がいいじゃないか」 言い争いをしながら、人気のないキャンプ場へと向かう。 冬の間、人が通る事のなかった山はシンと静まったまま、二人の様子を窺っているようだ。
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