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(───さて、どうする?)
美夜は笑みを貼り付けながらも、思考を回転させる。この場をどうするのか。
吉田を見やれば、頬は蒸気しており少し酔っているようだった。
(……勝てる、か?───いや……)
相手は酔っている。加えて油断だってしている。勝てない相手ではないはずだった。けれど───愛刀、月華と白夜は屯所に置いてきた。
美夜が今所持している武器と言えば、クナイだけ。それも護身用として着物に忍ばせた十にも満たない数のものだった。
相手の力量がわからない今、迂闊に手を出しても返り討ちにあってしまう。例え相手が酔っていたとしても、過去に自身に一度も勝利したことがない者だったとしても。
だが───
(今、やらなければ……きっとこんな絶好の機会もう無いわ)
その思いが、美夜を引き留めた。今、此処で、奴を殺せと。訴えかけてくる過去の自分。
血塗れで泣くことすら出来ず、ただ立ち尽くしていた自分。目の前の人が冷たくなっていく瞬間を、呆然と見ていることしか出来なかった自分。
(今は、違う。私には力がある……)
そうだ、力があるのだ。感情に負かされる無力な少女などではない。感情をコントロールすることが出来るようになったのだ、実力だって自分の方が上だった。怖いものなど何も無いではないか。
勝てるか?いや、勝たなくてはならない。
『殺しなよ、貴女(美夜)は何の為に生きてきたの?』
不意に。
過去の自分が、口元に弧を描いた。狂気に満ちた紅い瞳と、血塗れの着物を身に纏った姿で。
───キィンッ!
金属音が、遊郭の闇へと響く。一瞬先に刀を抜いた吉田と、吉田よりも先にクナイを投げ付けた美夜によって引き出された音である。
「なっ───!」
吉田は思わず目を見開き、驚きを露にした。それを見て、美夜は面白くなさそうに舌を打つ。
「……何年ぶりかしら、攻撃を防がれたのは」
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