17/22

204人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
「では……何処から話しましょうか」 美夜は右手を顎にあて、考える素振りを見せる。その姿はいつもの刹那のようで、刹那ではない。 「……まず、お前は敵か?味方か?」 土方の鋭く的確な問い掛けに、美夜は苦笑を漏らし答えた。 「そうですね……どちらでもない、と答えておきましょう。 ただ、素性を隠していた点で言えば私は裏切り者なんでしょうね」 にっこり。 いつも見ている刹那の笑みに、これ程までに恐怖を感じたことがあっただろうか───? と、土方は思う。 無邪気な笑みを浮かべながら、彼女はずっと我々を騙していたのだ。なんて残酷なことだろう。 (……最近感じていやがった違和感はこれか) ちっ、と土方は一人でに舌を打つと美夜から芹沢へと視線を移した。 「芹沢さんは刹那───いや、美夜のことを知っていたんですか?知っていて俺達に黙っていたんですか」 怒気の籠った言葉に、慣れない敬語。何ともミスマッチな組み合わせに、美夜は小さく笑みを溢した。 そんな美夜を芹沢は呆れた視線で見やる。 「ある程度は知っていたがな……詳しいことは知らん。重要なことをこいつは隠すからな」 芹沢のその言葉に、美夜は曖昧に笑った。 「美夜さん……一つ、聞いても?」 次いで口を開いたのは、沖田。美夜は少しだけ早まった鼓動に気付かぬ振りをして、やはり笑う。 「……何ですか?沖田さん」 「美夜さんが前言っていた、やるべきことと言うのは───復讐、ですか?」 「……どうでしょうね」 沖田の不安気な瞳に、少しだけ心が揺れるのを感じた。その感覚に戸惑う自分がいることも。 らしくない、と自分に言い聞かせ、平然を装う。 沖田はきっと心配しているのだろう、美夜のことを。けれど、美夜にとってそれは嬉しい反面、邪魔でもあった。 彼女の復讐を妨げることになるであろう、沖田の感情が。 (ほら、だって今でさえ───) 沖田に、全部を話してしまいたくなる。 ずっと誰にも言わず、言えず、内に秘めてきた想いを独りで抱えているのは、正直辛かった。 大人びてはいても彼女は二十歳にも満たない少女で。 話すことが出来たらどんなに、どんなに、楽になれることだろう。  
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

204人が本棚に入れています
本棚に追加