204人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
(……やっぱり苦手ね、近藤さんは)
実は美夜が壬生浪士組内で一番苦手なのは、近藤だったりするのだ。
勿論、土方や芹沢、沖田を始めとする幹部も苦手な対象ではある。勘の良さだってずば抜けているし、奇抜な発想や的を得た質問をしてくるからだ。
だが、近藤は───近藤だけは、違う。
近藤は普段温厚で、基本何に対しても怒ったり口出したりはしない。
それは何故か。一見、近藤が疎いだけのように見える。初めは美夜もそう思っていた。
けれど、一緒に過ごしていくうちに気付いたのだ。
近藤は疎いからでも、皆を信頼してるから口を出さないのではない。
近藤は───全てを知っているからこそ、口を出さないのではないか、と。
そして、近藤はきっと、この壬生浪士組内で一番に冷酷で、残酷なんだろうとも思う。
彼は、この壬生浪士組の為ならどんなに大切な人でも切り捨てることが出来る───そんな、冷酷さと残酷さが。
その証拠に、近藤は時折冷たい瞳を見せる。それは美夜が何度も見てきた瞳でもあった。
だから、きっと近藤は───いつか、仲間をも切り捨てる。
そんな小さな予感と、勝手な見解。事実は定かではないが、それを否定出来るものを生憎美夜は持ち合わせていなかった。
「芹沢さんは?」
不意に聞こえた土方の声に、美夜は考えるのを中断し芹沢へと視線を移す。パチリ、と芹沢と目が合う。
「良いだろう。儂も美夜の戦法を実際に見たことはないからな。まぁ、実力が確かなのは認めるが」
皮肉っているようにも聞こえる芹沢の言葉に、美夜は人睨みをきかせた。酔っているのはわかるが、流石に好き勝手言い過ぎである。
(これで白狐だなんてバレたらどうしてくれるのよ……)
全く、これだから酔っ払いは質が悪いのだ。
最初のコメントを投稿しよう!