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お久し振りです。
貴方に文を書くのは、二年ぶりですね。如何お過ごしですか?
貴方と離れてから、もうこんなにも時が経ってしまいました。
知っていますか?人は人を忘れていく時、声から忘れていくのだそうです。
……私はもう、貴方の声を思い出すことができません。
貴方と過ごした日々の残滓は、確かにそこにあるのに。
貴方と見た桜、貴方と歩いた橋、貴方と遊んだ川……貴方がくれた、髪飾り。貴方の面影は残っているのに、声だけは思い出せない。
貴方は「二年も会っていなければ当たり前だ」と、そう言って笑うことでしょう。
それでも私には、思い出せないことが寂しくて仕方が無いのです。
貴方の栗色の綺麗な髪、意地悪そうに笑う顔、私の髪を耳に掛けてくれるその仕草。
いつか同じように思い出せなくなり、思い出せないことすら、忘れてしまうのでしょうか。
……この文が届くかは分かりませんが、もし届いたのなら一度。
私に、会いに来てくれませんか?
……どうか。どうか私が、貴方を忘れてしまうその前に。
月無 美夜
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