プロローグ

2/2
前へ
/11ページ
次へ
――――…ギィ…ギィ… 音がする。 風の音でも、木がざわめく音でもない。 ―――ギィ…ギィ ――――何かが、ぶら下がっている音。 辺りは真っ暗で、電灯も何も無い。 そんな中、長い階段を上る一人の女がいた。 その階段の先には、稲荷神社がある。 垂れた目元は、少し疲労を感じ取れる。肩までの髪の毛は、ボサボサで整えられていない。濡れているように感じるのは、風呂上りだからだろうか。 女は足元を左手に持った懐中電灯で照らし、ただひたすら階段を上った。 ――――ギィ…ギィ 聞き慣れない音が彼女の耳に届いて、彼女はハッと顔を上げる。 丁度階段を上り切った時だった。 神社の鳥居にぶら下がった“それ”を見て、気付けば女は驚愕と恐怖に悲鳴を上げていた。 「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 手に持っていた懐中電灯が落ちて、音を立てて粉々に砕け散る……。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加