始業

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「実はね……」 「うん」 由奈の息が耳にあたってくすぐったい。その声にはどこか緊張感のようなものも感じられた。 「わたしーーーー」 「うんうん」 日が暮れていく。 教室の影と同化し、闇に吸い込まれていく私たちの影法師。 間延びした時間がやけに長い。 そうして、由奈は言った。 「『ハウス』、使っちゃった」 「…………うん?」 遠くの赤い空で、カラスの群れが狂ったように鳴いていた。
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