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Ⅱ闇に紛れて
扉が開く音が聞こえてセリは顔を上げた。
やがて部屋の扉も開いて黒髪の青年が入ってくる。
青年はセリに一瞥くれた後、ソファまで歩いてきてドサッと手に抱えた荷物を机の上に置いた。
その後ろからもう一人青年が入ってくる。
好き勝手に跳ねた灰褐色の髪をゆるく無造作にくくり毛先は肩に揺らしている。焦点の合わない暗雲のような灰色の瞳と優しい笑顔をたずさえた青年はセリに目を向けた後、興味深そうに目を細くした。
「この子がそうなの?」
どこか楽しげな歌うような口調。
セリはその青年が自分のことを言っているんだと思って体を強ばらせた。
「ああ」
黒髪の青年は適当に答えて一つの紙袋をセリに投げてよこした。
セリはあわてて受け取って中をそろりと覗き込んだ。
「服……?」
「そ、僕が選んだの」
セリはそう教えてくれた灰褐色の青年に信じがたい目を向ける。
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