Ⅰ罪のない戯れ

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青年は軽く避けて流れるような動きで少女のみぞうちに拳を沈める。 少女は声も無く呆気なく倒れた。 青年は服についたほこりをはらって進んでいた方に足を動かした。片足が動かないことに気付いて足元を見下ろす。 少女が青年のズボンの裾を握っていた。 青年は引き剥がそうと少女の腕に手をのばす。少女のむき出しの肩にバーコードのような黒い線が並んでいた。 「……戒め(ヴァン)」 青年は静かに吐息のような声をもらして、目を細めた。 少女の閉じられた目から零れた涙が頬をつたう。 青年はそれを親指で拭ってやって少女を肩にかついだ。 スラムにまた足音が響く。
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