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少女はゆっくりと目を開けた。いつの間にか流れた涙を拭いもせず天井を見つめる。
天井には大小様々ないくつもの配管が行き交い、その上に、むき出しのコンクリートが存在していた。
皆と暮らしている部屋を思い出した。
でも、あそことは違う。笑い声や喧嘩の声が聞こえない。
ここはどこだろうと少女は不思議に思う。ガタッという音が聞こえて顔をそちらに向けた。
煙草をくわえ、左右の手に皿を持った青年が部屋にあるドアから姿を現す。堅い印象を持たせる墨のような髪と瞳。伏し目がちな目はつるでもなくたれるのでもなく両方共に均等がとれている。どこか影を持つ表情は無表情に近い。
青年は少女を一瞥して視線を外した。
「起きたか」
「……あなたは誰?」
少女は虚ろな瞳で青年に尋ねた。
「あんた、記憶がないのか?」
青年は目を見開き少女を見つめる。
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