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青年は話ながら身仕度を終えて、扉に向かってここから出ようとする。
「ああ、それと命令だ」
忙しなく動いていた足を止めた青年がセリの方へ振り替える。
「このビルから出るな。それが守れたら服ぐらい買ってきてやる」
青年はそう言い終えると部屋を足早に去った。
セリは一人部屋に残され、足の力が抜けたようにその場に座る。
「何……なんですか」
セリは無意識の内に名前も知らない青年に問い掛けていた。
セリは床に座ったまま、呆然と窓を見つめた。
丸い月が上がっている。
今まで見たいと思っていた月が自分を照らす嬉しさは込み上げてこなかった。
――帰らないと
セリはそれだけを堅く心に刻みつけた。
【Ⅰ罪のない戯れ】
‐a harmless flirtaiton‐
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