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私には今、バイクが無い。以前、勤めていた会社を辞めた時、維持費がキツくて泣く泣く愛車の400CCを手放した。 結婚などの環境の変化で なかなか乗れない人も多いみたい。女性はとくにそうなんだ。 シンさんと結婚したミナミさんは例外で、ツーリングにも参加している。 羨ましい気持ちを交えて、梅酒を呑んでいると 昔のツーリング話に戻っていく。 さすが、皆さん。土地やら道やら 暗号のような数字やら……覚えている層の厚さが素晴らしい。 これが余裕というものなのか。 私は、ついて行くのに必死だったから。楽しいと同じくらい、ドキドキヒヤヒヤだったんだ。 方向音痴も手伝って、もっぱら記憶の中心は、ルートの事より景色や美味しいものとかだしさ。 だけど、大好きだったワインレッドの愛車のエンジン音は、身体を震わす動きと共にしっかりと覚えている。 愛車と言うべきか、戦友と言うべきか。 時には、恋人でもあったバイク。 旅先で撮った数え切れぬ程の写真には、いつも凛々しく。そして美しく、私の傍に輝いていた。
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