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しかし、もう啖呵(たんか)を切ってしまったからには仕方が無い。
俺はなんとかやり過ごそうと部屋を見渡した。…相手は刃物だ。それに対抗できそうなものがないと、素手で勝てるわけがない。
「うおらあ!」
「うお!」
だが相手は全く遠慮がないみたいで。素手の俺にも普通に襲いかかってくるものだからたまらない。
今のもギリギリで避けれたけど、暗いから見えないし距離感もつかめない。頼りなのは音だけだった。
しかし運は悪い方向にばかり転がっているわけではなかった。刃物を飛び避けた先に、月明かりで見えたパイプ椅子があった。俺はそれを掴むと、相手に思いっきり投げつける。
「ふん!!」
「ぎゃっ!!?」
ガッ!
うおし!うまく命中してくれたらしい!
相当痛かったらしく、泥棒は「いてぇ…!!うぅ…!」と唸ると、部屋の外へと走っていった。
「あ、まて!」
このまま刃物を持ったこいつが外に出たら、全く関係ない人を巻き込みそうだ…!
それはやばい、と俺はダッシュをしかけた。
そう。
しかけて、すぐにベランダへ脱出し、雨樋に飛びついた。
道路に着地すると、近くにあった物陰に身を潜める。
普段の仕事のおかげか、それはかなりスピーディな行動だった。
まもなく
紺色の空を赤い光がひた走り、静かな夜にうるさいサイレンが鳴り響く。
…危なかった。
俺は物陰でジッと、さっきまで戦っていた泥棒が警察に捕まっていく姿を見送る。
…鳥肌ものだ。ゾクッとした。
もう少しで、俺も一緒に捕まるとこだった…。
…いやまて。というか、俺今いいことしたのになんで逃げてるんだよ。普通に泥棒がいるのに気付いて、追い払ってた、で済む話じゃないのか?
…どんだけサンタクロースの仕事に後ろめたい気持ち持ってるんだよ俺…。
「こらっ!!」
「ひぎゃあっ!」
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