偽善と善良

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凹んでいる俺に、突然怒鳴り声がかかる。 悪いことしてないって今理解したとこだったのに、俺は結局このときすぐにやばいって思ってたのが笑えるとこだ。 どうせ捕まるのか、俺も…。 しかし、声の主が分かると俺は安堵のため息をついた。 「人の顔見てため息ってなによ」 「…お前ほど気の抜けるやつはいないよ」 「あ、そう」 可奈は俺の言葉にまんざらでもなさそうに笑う。 始めて思ったかもしれない。幼馴染っていいもんだって。 「まあいいわ。とりあえず場所変えましょ。こんなとこじゃ落ち着かないわ」 可奈はパトカーの止まっているすぐ横のアパートを冷たい目で見つめると、堂々と道路を歩き出した。 可奈の履くヒールの音が響く。 俺も、のそのそとその後ろを歩いた。 …すげえよこいつ。 俺と違ってサンタクロースの仕事に後ろめたいなんて感情、持ってないんだろうな。 だから警察がいても堂々と歩けるんだ。 可奈にこれほど感謝したのも、このときが始めてだと思う。 堂々と歩くのもいいけど、可奈はサンタコスだから…。 ぎこちなく歩く俺なんかちっぽけで、可奈のが存在感ありありだったんだ。
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