偽善と善良

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約束の公園。 駅前の公園は街も力をいれているのか、中央にある噴水を中心にイルミネーションが飾られていて、気持ちを落ち着かせる場所としては恰好(かっこう)の場所だった。 噴水のベンチにドサッと腰掛け、うなだれる俺。一気に緊張が解けた気がした。 可奈は俺の前で腕を組んで立っていた。 「で、仕事は?」 「………あ!」 だが俺は可奈の質問にガバッと首を起こす。 やっちまった。プレゼント置きっ放しだ…。 「お、置いてきた…。これって、いいのか?」 目をつむり、両手で顔を覆う。ダメだって言われたくないから、ついそうなった。 俺にとってサンタクロースの仕事は好きではないが、プライドをもってやっていることではある。 失敗なんてしたくない。今までずっと、俺は成功してきたんだ。 「ダメじゃないんじゃない?プレゼントを置いてくるのが、私達の仕事だもの。警察に見つかったのは拓郎じゃなくて泥棒なんだし」 一瞬、「ダメ」という言葉に心臓が反応したが、その後の否定の言葉で落ち着いた。 「よ、よし。なら、仕事は終わった。さっきのが最後だから」 「そう。じゃあ拓郎の勝ちね。私、プレゼント残り1個だけ届けれなかったもの」 「え?」 俺は自分に似合わずきょとんとなった。 可奈が仕事を残してくるのなんて始めて聞いた。たとえ負けたとしても、最後まだ終わらせてくるのが普通だし、それが可奈ならなおさらだってことも俺は知ってる。 それこそ時間だってあっただろうし、俺のとこに偶然出くわしたのだって余裕があったからとかじゃ…あれ? 「可奈、なんで泥棒がいたって知ってるんだ?」 「え」 何気なく聞いた質問が、可奈の顔を急に真っ赤にさせた。 え?なんで? 「ぐ、偶然よ偶然!偶然、道を歩いていたら拓郎の叫び声が聞こえてきて、なにかと思ったらアパートの2階からどったんばったん気こえてきたから、とりあえず警察を呼んで騒ぎにしてもらおうと思っただけ!!」 「………」 …まさかの。可奈が警察を呼んでくれていたのか…。 ガクッ、と俺はさらにうなだれる。 「た、拓郎?」 「あ、ありがとう…」 もう二度と言うことはないと思うが、俺は最初で最後になるだろう感謝の言葉を呟いた。 正直負けた気がしてお礼とか言う気にはなれなかったが、可奈の今日の行動に、言葉を心から押し出されたような感じがした。
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