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そして、俺は唖然とした。
可奈の案内した場所。それは
「俺の家? じゃんか…」
通ってきた道全てに見覚えがあると思った。よく知っている道だと思っていた。
けどまさか、その先が慣れなんて言葉を通り越した表現を持つ自分の家だなんて、誰が想像できるだろうか…。
「まて、俺の記憶では俺は一人っ子のはずなんだが。辞めてくれ、隠し子とかそんなの」
頭を抱える俺に可奈は「落ち着け馬鹿」と罵った。
「え?じゃなに?そのプレゼント誰のなの?母さん?親父?」
ハテナマークが泳ぐ頭の中を、「誰の」という言葉のえさがふらつく。
「拓郎のよ」
わお、大物が釣れた。
「…は?ちょっと、理解ができないんですけどどういうこと?」
眉間にふかぁいしわを寄せた俺を見て、可奈はふかぁいため息をつく。
「あんたへクリスマスプレゼント。ちなみに送り主は、あんたのお父さん」
「………は?」
可奈は背中の袋からプレゼントを取り出すと、俺に押し付ける。
頭の中が真っ白だ。
親父からプレゼントなんて、生まれてこのかたもらったことがない。
いつもプレゼントを渡してくれるのは母さんだ。そのお金のもとは親父の稼いだ金であったとしても、親父はいつもその場にはいなかった。
堅苦しい、親父の顔が浮かぶ。なにがしたいんだ。
「あと、これ」
さらになんとまあ、ご丁寧に白い封筒に入れられた手紙も渡される。
うわお、ほんとに送り主親父じゃねえか。
俺は封筒を震えそうな手で開けて、手紙を開いた。
そこにはただ短く、
『不器用な父ですまないな。誕生日おめでとう。そしてメリークリスマス』
と、余白ありありの文面で書かれていた。
…不思議だ。
これだけで、俺は泣けそうになったんだ…。
本当に不器用だ。
親父も、俺も…。
「あ…、それとね」
「な、なに?」
涙ぐむ俺を、可奈は気まずそうに伺う。
可奈は俺の親父との微妙な関係を知ってたからな。気まずくなるのも無理はないか。
可奈は大変気まずそうにぼそぼそと呟いた。
「さっき、拓郎が泥棒と戦ってた家なんだけど。あそこ、私の家…だったり」
「………え?」
俺の17歳の誕生日。
それはそれは、一生に一度のとてつもなく騒がしいクリスマスだった。
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