偽善と善良

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「今年は、ぜっったい!負けないわよ!!」 バンッ! と俺の机に強烈な張り手が降(くだ)された。 昼休み真っ只中の教室は、なんだなんだ、とみんなが口を閉じる。 最悪だ。 俺はこういう風に目立ちたくないのに。 「あの、申し訳ないんだけど、自分の教室戻ってくれないかな」 俺は冷静に、張り手の主様の無礼講を批判する。 「…怖気付いてるのね。無理はないか!去年までの私とは一皮も二皮も違うもの!」 しかし彼女は何を思ってか、自分が変わったことに対する自慢話を始めてしまった。 変わったのは髪型と、あと余談で一人暮らしのために最近引っ越したことくらいで、後は全然変わってないし興味もないんだが。 あ、そうだな。 変わってないとこ、特に空気が読めないとことか。 幼馴染というのも考えものだ。 多分普通なら特別な存在として感じるものなんだろうが、俺のそれは酷すぎて、他人に幼馴染だと紹介する気にもならない。 むしろ、断固他人だと述べたい。 「…自分がすごくなったのは分かったから。俺は何も変わってないから。戻って頼むからほんとお願い」 これ以上彼女と話しているところを周りに見られたくない。 その一心で俺はため息と共にお願いをするが。 「分かってないわ!だってあんた私のネックレスが変わったことに気付いてないもの!これ、プレゼントでもらったのよ。可愛くない?!高いのか安いのかは知らないけど!あと、私の携帯のストラップも実は変わって…」 「………」 ああ、最悪だ…。
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