偽善と善良

3/15
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「ただいまぁ…」 「おかえり~。冬休みなのに登校お疲れ様!」 学校も終わり、家の玄関の扉を開くと、母さんが蔓延の笑みで俺を迎えてくれた。 母さんの言うとおり、今日は冬休みだというのに登校日だったのだが、玄関にまで匂ってきた食欲を豪快にそそる肉の匂いは、俺のモチベーションを多いに上げてくれた。 「今日はすき焼きよ~。なんてたって、年に一度のこの日に気合いいれないわけがないもんね~」 そう言って、嬉しそうにふふん、と笑う。 きっと母さんは今日を大事にしていて、今日に期待しているのだろう。 …俺と違って。 「…晩飯、できたら教えて。いろいろ準備してくる」 「あら、用意周到ね。まあ拓郎も17才になったんだから、しっかりしてきたってことね。…あ!いけない、お鍋に火かけっぱなしだわ!!」 バタバタと、母さんは廊下を走って行った。 持っていたおたまを振り回しながら走るものだから、ついていた液体がポタポタと床に落ちていた。 あーぁあ…。母さん、そういうとこ抜けてるんだよな。 俺は仕方なく、床を拭くためのタオルを取りに行こうとする。 しかしそこに 「母さん、床濡れてるぞ」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!