偽善と善良

4/15
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
…親父がリビングから丁度出てきて、廊下で俺たちは顔を合わせた。 本日始めての顔合わせだが、ふんわりしてる母さんとは全く似てない、万年堅苦しい親父の顔は相変わらずだった。 「拓郎。今日は何の日か分かってるな」 特に表情も変えることなく親父はそう言って、上着のポケットから茶色い封筒を取り出した。 「これが今年の分だ。去年より多めにしてある。…時間通りに間に合うように終わらせて来なさい」 「……あぁ」 俺は封筒を受け取り軽い返事をすると、親父を避けて引き続きタオルを取りに向かう。 親父はその俺の背中を見ていたのかどうかは知らないが、何も言わずリビングへと戻って行った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!