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ガタリと蓋のようなそれを開き、中で横に寝そべるコーヒーを手に取った。
自販機に鞄を立て掛け、自販機に背を向け、プルタブを爪で慣れた手付きで開ける。あと少しで潤えせる、全くもって楽しみな瞬間に大いに期待する。
コーヒーを一口、飲もうと口に当て、傾けようとした瞬間。
視界に数式が埋め尽くした。真っ暗な空間を無尽蔵に駆け巡り、敷き詰まり、溢れ変えるその式。
全てを理解できず、見たこともない式に唖然とした。何より視界を埋め尽くしたそれよりこの事自体理解が追い付かなかった。
コーヒーを持つ手の力が弱まり、手から離れて缶は下へ向かい宙を落ちていく。
ガァン…と何とも言えないコンクリートと缶の衝突音がその人気のないその場所に響き。
地面に黒く広がるコーヒーと空き缶だけを残して彼の姿は何もなかったように、唐突に消えた。
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