不審者

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「どうぞ。」 手をソファーの方へ向けられると座ざるえないので先に座る。 「日本国と聞きましたがそれはどのような国で?」 まず日本と呼ばれる国は知らない、向こうは何故か当然のように言ってきたが知らない、加えて自衛隊に関して等色々聞きたいことが山のようにある。 「いや、どんな国と言われましても他人の悪口を言うだけの政治や素人が芸能人という理由なだけで当選したりするイメージしかないですね。」 「いや、そういうことを聞いているのではなく産業や社会基盤としてのことを。」 メリッサ少尉は自国のことをここまで平気に侮辱する軍人を始めて見た。 普通は自国のいい部分しか強調しないものだろうが彼の場合いきなり暗部の部分を強調するかのように言ってのけたのだ。 謙遜のようにも見えたが彼の場合その雰囲気が感じ取れなかった。 「そういうことですね、日本は軽工業から重工業まで得意です、金融もトップとは言いませんが上位にはあります。また本の発行部数も世界一だと思います。」 今度は異様に褒め称え始めた、彼の思想はよく分からない、だが全てにおいて世界一と言っていないところからして恐らくバランスが良く取れて尚且つ本という目立たない部門で世界一に立っていると推測を立てた。 「世界地図でいうとどのあたりだ?」 「世界地図ですか?少々お待ちください。」 彼はそういって長方形型の物体を取り出しペタペタといじるが一度だけため息をつき部屋から出て行ってしまった。 その間に気を抜き背もたれに体を沈める。 ふとテレビに視線を向けるとそれもあの看板同様に古びたものだ、テレビは最近販売され都市部、いやその都市部ですらまだ流通しきっていないはずなのに何故彼は持っているのか。 最近販売されたはずなのに何故古びていることに関してはもう触れないことにした。
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