迷い込んだ者たち

4/20
前へ
/60ページ
次へ
萩原の返答を無視するようにガレージの隣にあるロッカーから自転車の数を確認し始めると本気ですかとため息をつく。 「まず家の中で挨拶することが先決だと思うけど?」 山之内常識的な判断を下すと二人はしぶしぶと家の中へと引きずられるように入った。 「おかえり晃ずいぶんと変わった車で帰ってきたな。」 晃の父親がからかうように言う、この辺では確かに変わった車だろう。 「まぁ、まずは形からっていうでしょう。」 「形からと言って思い出した松下スマートって知っているか?」 「どうしたの、藪から棒に。」 「いや~何か父さんの作物が中国や東南アジアで人気でさぁ、一気に貯えが増えてスマート家電にしたんだ。」 そういうと松下製のスマートフォンを取り出して見せ付ける。 「それだけじゃない、太陽電池と蓄電池も購入した、これで南海トラフが来ても問題はない。」 「うち確か発電機あるしガソリンスタンドもあるから問題ないと思うけど。」 「細かいことは気にしない!昼間の仕事中は電力会社に電気を売っているのさ!」 「まぁ確かに今はクリーンエネルギー免税制度がありますからね、国の政策に沿っていて良いと思います。加えて今は原発をまた稼働し始めましたが一部では完全停止していますからね。」 萩原がフォローに回るかのように言うがそれを否定する。 「でもさぁ今回は国は本気だぞ、余った予算を今まで道路潰して新しく造ったりしていたけど今は余った予算で区間ごとに自転車専用道路を造っているし。クリーンエネルギーだって一気に進む、そのうち電気を買ってくれないような気が・・・」 持論を持ち出すが自分より政治に詳しい萩原には適わなかった。 「昔だって石油エネルギーから原発に切り替えるのに30年以上係りました、それでやっと全体の20%になりました。でも原子力のような安定したエネルギーを使っても20%なのでクリーンエネルギーに切り替えるには何年かかるのか見当がつきません。」
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加