0人が本棚に入れています
本棚に追加
ニヒリズムな彼
お前は息をしている。そうだよな、と確かめてみると億劫そうに言葉が返される。
――生きているからね、と。
なぜか温かく響かない。難しい顔をしていたのだろう。額をデコピンされた。
意外とこれが痛い。細くてすぐに折れてしまいそうな指にしてはすごい威力だ。
いてぇ、と文句を言えば、生きているからね、と同じように音を紡ぐ。
彼には何かわかっているのだろう。
俺にはわからなかった。
もし、と彼はどこを見ているかわからない表情で口を動かす。
「もし、生きることに意味を求めるなら、死んだ後もその意味が残る。死んだのに生きてることになる」
同意を求めるように横目で見られる。妖艶、という奴だろうか。嫌な色気じゃない。その真っ黒な瞳には生気がないのに、妙に力を持っていた。
死にたがりなことは前々から知っていた。こいつと腹を割って話せるのは幼馴染の俺しかいない。たぶん。四十六時中、一緒にいるわけでもないし、全てを知っているわけではない。
周りに他の奴がいる時は、適当に笑って、適当に話して上手く存在感を消していた。
俺はそんなに器用じゃないから喧嘩して、告白したり、ダチとつるんだりする。
最初のコメントを投稿しよう!