ニヒリズムな彼

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ニヒリズムな彼

お前は息をしている。そうだよな、と確かめてみると億劫そうに言葉が返される。 ――生きているからね、と。 なぜか温かく響かない。難しい顔をしていたのだろう。額をデコピンされた。 意外とこれが痛い。細くてすぐに折れてしまいそうな指にしてはすごい威力だ。 いてぇ、と文句を言えば、生きているからね、と同じように音を紡ぐ。 彼には何かわかっているのだろう。 俺にはわからなかった。 もし、と彼はどこを見ているかわからない表情で口を動かす。 「もし、生きることに意味を求めるなら、死んだ後もその意味が残る。死んだのに生きてることになる」 同意を求めるように横目で見られる。妖艶、という奴だろうか。嫌な色気じゃない。その真っ黒な瞳には生気がないのに、妙に力を持っていた。 死にたがりなことは前々から知っていた。こいつと腹を割って話せるのは幼馴染の俺しかいない。たぶん。四十六時中、一緒にいるわけでもないし、全てを知っているわけではない。 周りに他の奴がいる時は、適当に笑って、適当に話して上手く存在感を消していた。 俺はそんなに器用じゃないから喧嘩して、告白したり、ダチとつるんだりする。
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