第三章・ー最後の一人ー

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 どうしよう。このまま帰ると、これで話が終わっちゃうよね。  いや、別に終わらせても良いかなとは思うんだけど、何となく普通に話せる機会を即終わらせるのがちょっと惜しいかなとも思うし、それだと引き止める材料が必要だよね。  材料……、材料……。んー。……ダメだ。何っも思いつかない。 「あ、秋君っ」  もう良いや。仕方ない。取り敢えずで名前だけ呼んじゃえ! 「な、何だ……」  人がちょっと悩んでいる間に、既に公園の出入口にまで足を運んでいる秋君が、それこそ先刻までの優しそうな表情などどこかに置き忘れてきたみたいに、「何か用かよ」みたいに振り向いた。 「え、えーっとぉ」 「うん?」  ヤバイわ。本当に何も思いつかない。話題、話題、何でも良いから話題ーー。 「……」  そうこうしている内にも身体ごと向き直り、腕組みしながら私からの言葉を律儀に待ってくれている。  優しいんだか怖いんだか分からない対応の仕方だわ、これ。
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