第三章・ー最後の一人ー

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「ありがとう」  つないだ手はじんわりと暖かくて、何だか安心してしまう。  きっと、今度は置いて行かないようにするために、そうしてくれたんだよね。 「……」  そこからは会話もなくて、家までの短い距離をゆっくり歩いて行くばかりだ。  星空は都会に近いからあまり見えないけど、それでも空気は綺麗だからきらきらと輝いている。 「秋君」 「ん?」 「今日はありがとうね」  思い切って話しかけてみると、意外と素直に応えてくれたので、心の底から思った事を伝えてみる。  すると秋君は、しばらく沈黙した後で立ち止まり、振り返りもしなかったけど低い声で言った。 「……俺がそうしたかったから……」 「うん。理解してるよ。ありがとう。友達になってくれて、ありがとう」 「…………うん」  それだけ返して、握っていた手にぎゅっと力を込める。  嬉しいな。出逢い方は最悪だったけど、ちゃんと話し合えたら理解を深められるんだ。
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