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タンポポの花が広がる草原の中で、小さな手で顔を覆いながら泣いている女の子がいた。
柔らかい風に吹かれてなびいた髪の隙間から垣間見えた顔には見覚えがある。
ーーそうだ。あれは……、昔の私だ。泣き虫だった、私の姿だ。
傍では困った表情のままの男の子が、何とか宥めようと、必死になって私の頭を撫でてくれていた。
ーーうー……ちゃん……?
ーー泣かないで。ゆうちゃん。僕忘れないよ。ゆうちゃんのこと、忘れないから。だからまた、あえるよ。その時は絶対に、ゆうちゃんを二度と離さないから……。
そうだ。私、うーちゃんと約束した。ここで、この街で、タンポポの花に見守られて約束したんだ。
私は転校してしまうけど、二度と逢えなくなる訳じゃない。必ずもう一度、再会しようって……。
ーー約束。ねぇゆうちゃん。僕、タンポポの花を指輪にして、ずっとずっと、探すからね。そして、待ってる。もう一度、ゆうちゃんとあえる日を……。
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