第一章・―想い出―

3/24
前へ
/159ページ
次へ
 悲しい想いを抱いて幼い二人を見詰めていると、不意に頭上で電子音が鳴り響き世界は崩壊した。  それと同時に、慌ててがばっと飛び起きる。生活感のない部屋に、必要最低限の家具だけの中で目覚めた私は近所迷惑も省みず、思わず絶叫してしまう。 「ち……、遅刻しちゃうー!!」  そのままベッドから飛び降りて支度を済ませて学園へーー。  転校初日から遅刻ってあり得ないんですけど……!  心の中でそう叫びながら走った。  そうしてようやく辿り着いた時には、遅刻ギリギリの時間。だけど、校門を見上げて立ち止まる。  私は昔、この街に住んでいた。だけど両親の仕事の都合で転校してまた、戻ってきたんだ。  大好きなうーちゃんと交わした、幼かったけど真剣だった約束を果たすために、両親を説得してこの街にーー。  ……うーちゃん、まだこの街にいるよね? 約束、忘れてないよね? 私、帰ってきたよ。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加