第一章・―想い出―

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 ちょっ……いきなりキスとか、この人一体何考えて……!  しかしその直後、私達のすぐ側を、何人かの女生徒が走り去って行ったせいでしばし呆気に取られてしまって、罵声を浴びせるタイミングを逃してしまった。  彼は女生徒がいなくなってもしばらくキスしたままだったけど、やがてもう大丈夫だと判断したのか、離れると再び一言。 「付き合わせて済まなかった。じゃあ」  しかもそのまま、何事もなかったかのように、悪びれる風もなく片手を挙げると軽すぎるお詫びをして、去って行こうとしたので呼び止めた。 「ちょっと。私の返事も聞かず、勝手に抱きしめた上にキスまでしておいて、“済まなかった”の一言で済むと思ってるの?」  仮にもさっきの、ファーストキスだったのにーー! うーちゃんとさえキスしたことなかったのにーー!  泣きそうになりながら訴えたのに、対する彼は、きょとんとしてまたも一言。
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