森の番人と温泉と

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ジェスが岩場の壁面をくまなく探し始めると、キロが岩をひっくり返し始め、大岩を持ち上げた。 「おーい、その岩をどうする気? 此処を荒らしたら、見つかる物も見つからなくなるぞ」 「ゔっ…」 唸るなり固まった。 このゴリラ、短気を起こして投げ付ける気だったな。 「仁様、お待たせしました!」 メイリンとマオマオが飛び込んで来た。 「仁、キロは何をしてるんだ?」 大岩を持ち上げたまま固まってるキロを、マオマオは不思議そうに見る。 メイリンはキロの側に行くと、大岩を見上げて"おぉ〜っ!"と感動しながら、ぐるっと一回りし、今まで大岩の有った所で何かに躓いた。 「うぉっ、とっ、とっ…」 このっこのっ!と呟きながら、自分がつまづいた岩の欠片を蹴り始めた。 「気を付けろよ、この辺に奴等が此処へ来る目印にしてたもんが、何か有る筈だから」 「キロ様?何時迄その岩持ってるんですか?」 「おぉ…そうじゃな」 メイリンに言われて、漸く岩を下に下す。 「あっ、キロ様!ちょっと待って下さい。 その岩、裏側を上にして置いて下さい」 「こっ、こうか?」 置かれた岩に飛び乗ると、メイリンがナイフで真ん中辺りをガリガリ突っつく。 んっ?んっっっっ! 岩じゃ無い…張りぼて? 足下に転がってきた欠片を拾って、良く見てみる。 これは…モルタルじゃねぇーか。 「あったぁ!仁様、見つけました」 メイリンが中から取り出したのは、宝石に何処かの紋章を彫り込んだカメオだった。 「仁、あれは如何するんだ?」 「アモン、それを燃えつきない様に魔法で保護して、大気圏外へ打ち上げられないかな」 「出来ん事は無いが、なんでじゃ?」 直ぐにピンと来たのか、ジェスだけは俺の意図に気付いてニヤニヤしてる。 「仁様、大気圏外とは何処の事ですか?」 アメリアも、キロも、理解が追い付かない様にポカンとしてる。 「俺達は空気を吸ったり吐いたり、呼吸をするだろ? それを可能にするのが大気って言うんだけど、それは大地を包む様な層になってるんだ。 で、この大気ってのには抵抗が有って、そうだな…石を投げると下に落ちるだろ? これが大気の抵抗で、この大気の層を抜けようとする時には物凄い抵抗が摩擦となって生まれるんだよ。 すると、その大気摩擦で高温になって燃え尽きてしまう訳さ。 それを燃え尽きない様にして、その外、大気圏外へ出してやると、そこは空気が無くなるんだよ。 つまり、大気圏外は真空って事な」 メイリンとキロが、並んでウンウンと首を振ってるけど…本当に分かってんのかな? 「でっ、その真空の所へ、そのカメオを飛ばすとどうなるんだ?」 「どうなるんですか?」 「人間の身体は、大気圧って空気の圧力が有るから、メイリンはその身体、キロ殿もその身体の形を維持してられるのさ。 大気が無くなるって事は、大気圧も無くなる訳だから、どんどん形が崩れて膨らんで行く、そしたらどうなる?」 「皮が伸びきって…これ以上は無理ってなったら、パンッて破裂しちゃいます」 「そう、つまりはそう言う事だよ」 「だから、それはどう言う事なのだ?」 このゴリラは…。
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