森の番人と温泉と

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「そういや仁の国には、似た様な昔話が有ったよな? 何て話しだっけ?何とか太郎だったと思うんだが…」 「ジェス、それを今思い出すか? 浦島太郎の話だろ」 「そうそう、それだ。 海の世界へ行って、帰って来たら何百年も過ぎてたって」 「じゃぁ、戻って来たら、アメリアとメイリン、シュアンにリラはヨボヨボのお婆ちゃんてか」 「アメリア様は変わらないかと…神様ですよ」 アイラが、何を馬鹿な事をって呆れながら突っ込みを入れる。 「そもそもアメリア様さ、主らより遥かに年上だべ」 「おっ、キヨちゃん、珍しいな」 「珍しいかっ!わぁもアメリア様と一緒に、ロンロンさ乗って戦ってたじゃろ!」 「おぉ、そうだったな。 それはお疲れ様、そういや神獣達はどうしてる? こき使われてグッタリか?」 「アメリア様、神獣使いが荒いから… 問答無用で、ロンロンとマオマオを連れてったべ」 「あはははっ、らしいな」 「じゃぁ、減るのは3名ですか…」 言いながら通路を覗いてたクレアが、慌てて仰反ると、コンパウンドボウの矢が背後の岩に突き刺さって、ビィーンと振動した。 「彼奴等、向こう側で聞き耳立ててるのか?」 リラが放った矢なのが、その特徴から分かる。 「うほほっ、中々リラも地獄耳だべ」 抜いた矢を指先でクルクル回しながら、キヨちゃんが可笑そうに笑う。 「しっかし、待つだけってのは、どうにも耐え難いもんだな… 向こう側の状況が分かれば、未だ対応のしようが有るんだけどな」 ジェスは、相当に退屈なのか、どっかと座るとコーヒーを入れる準備を始めた。 後もう少しで2時間になろうかと言う時、アモンが。 「うむ、そろそろ戻って来る様じゃな。 魔力が尽きる前に片付いた様で、良かったわい」 「あぁ、俺もそろそろ限界だしな」 「仁様、無理しなくても大丈夫ですよ。 こちら側に嫁ーズ2人は残りますし、向こう側も幸せな余生を、きっと送れますから」 「クレア、さっきから何だか面白い事、言ってくれてるわね」 そう言いながら、リラが通路から姿を現した。 「クレアを、向こう側へ捨ててやる」 シュアンがナイフを抜いて、ニヤっと笑う。 「あっ、そ、それは…冗談よ、冗談。 本気でそんな事、言うわけ無いじゃない…ですか…」 「口は災いの元、注意なさい」 アメリアが、アモンから通路を引き継ぎながら苦笑いした。
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