グリストルム

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「それじゃ、エルマさん。 犬達が行う、救難捜索の訓練を説明して下さいませんか。 ねっ、見せて貰いましょ」 と、シュアンを見遣る。 「私は、捜索はやらないからね」 あはは、犬ってワードに反応したな。 てか、完全にアイラが仕切ってるじゃん。 暫く、エルマの説明に耳を傾けながら、犬達とハンドラーの訓練を見学する。 俺も知っては居たけど、実際に見るのは初めてなので、興味深く見学させて貰った。 「あっ、どちらかを犬が見つけた様ですね」 すると、犬が何度か鳴いたと思ったら、その場に伏せて動かない。 てかさ、その犬の動きを鳴く前に察知するエルマもやっぱり只者じゃ無いな。 「やはり、犬と言うのは嗅覚が凄いのぉ」 和尚がぼそりと呟く。 「だから、和尚様に何か有ったら私が助けてあげる」 シュアンに言われ、和尚の毛が逆立った。 「吾輩を、妖魔から妖怪にする気か」 どっちも、さして変わらんだろう。 「ちゃんと助ける。 じゃ無いと、仁様が困るから」 「そっ、そっか…その時は頼む」 真面目なシュアンに切り返されて、腰をおられたのか、和尚の耳が垂れた。 「ぷっ!」 「どうしたの?」 アイラが訝しそうに、俺を伺う。 いや、笑ってるの俺だけじゃねーし。 と、クレアは今にも吹き出しそうなのを、口を押さえて堪えてる。 「クレア?2人とも、この訓練で何か笑う所が有った?」 アイラの目が…恐い。 「違う違う、和尚が見事に滑ってるし、 シュアンも救難捜索しないって言い切ってたのに和尚を助けるなんて言うから…」 「和尚様が滑るのなんて、毎度の事でしょうに…」 "うぬぬ"と唸ると、俺の首からにゃんぱらりとアイラへ飛び移った。 「此奴めは、吾輩を売れない芸人の様に言いおってからに」 「和尚様、シュアンの眼を見て下さい。 先程から、シュアンはあの目で訓練場を見ています。 あの目をしてる時は、冗談が通じないのは和尚様もご存知でしょ?」 「う〜む…。 しかし、アイラも良くシュアンまで観察しておったの」
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