#1 He is a vampire.

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暗闇から声がする。誰かを探しているのか、何か呼びかけている。なんだろうか、不吉な気分だがおれにはどうすることもできない。それだけは、わかっていた。見つかりたくない。見つかりたくない。隠れたいが何もできない。おれはどうしたのだろう。暗闇が迫ってくる。嫌だ。嫌だ。でも、気持ちに反しておれは暗闇へと吸い寄せられる。あそこはおれにとってマイナスだが、何かあるようだ。それはおれにとって何になるのだろう。そう思ったとき耳元でさっきの声が囁いた。 ーーミツケタ 「ッ?」 頭に衝撃が走り、おれは顔を上げた。そこにはおれを少し怒った顔で見下ろす、幼馴染の直人の姿がある。そういえばおれは経済学の講義を受けていたのかと、腕の下に敷かれて皺くちゃになったノートを見てぼんやり思い出した。じゃあ、あれは夢だったのか…。そんなことを考えていると再び頭にぽこっと衝撃が走る。どうやら直人が手に持っている教科書でおれをぶっていたらしい。 「真央、聞いてたか?おれの話!」 「え、いや…」 ははっと笑って誤魔化すと直人は細く整えた眉毛を眉間に寄せてため息をつく。 「だぁかぁらぁ、今日、サークルで飲み会あるから、帰るなよ!って言ってんだよ!」 「おれパス」 軽くそういうと勝ち気な友人は、意味わかんねぇ!とおれに食ってかかる。 「お前、前もこなかったじゃん!今日は来い!」 「だって、おれあんまり飲むの得意じゃないし」 それを言っていると、前の席に座っていた同じサークルの女の子がこちらを振り返った。 「水野くん、来ないの?」 「悪いけど、パス」 「来たことないんじゃないかな、そろそろ水野くんとご飯食べたいな」 そういうと困ったように上目遣いをしてくる。 「行きます。絶対行きます」 そんな顔されたら行かないワケにはいかない。隣で直人がなんだよ、お前!と叫んでいるが気にしない。女の子はやったぁ!と可愛らしく微笑むと楽しみにしてるね、と手を振ってどこかへ行ってしまった。おれはほっこりと暖かい気持ちでノートを片付ける。なんだか今日イケそうな気がしながら彼女が去って行った方向を見て、鼻歌を歌う。もう、夢のことはすっかり忘れていた。
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