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「ん…」
頭がガンガンする。何してたんだっけ…。そうだ、先輩に酒呑まされて、気分悪くなって…それで、ここは…。
「おれの家?」
真っ暗だが、闇になれた目が見慣れた自分の部屋を映し出す。でも、どうして…。
「あ、目が覚めました?」
いきなり声をかけられ、ビックリしながら横を向くと女の子がいた。
「君は…」
起き上がろうとするが、途端に激しい眩暈に襲われる。すると、女の子がそっと布団を掛けてくれた。
「寝ててください。私、水いれてきますから」
「ありがとう。ごめんな」
女の子は軽い足取りで台所へ消えていく。真央はそれを見届けながら、深く息を吐くと布団へ潜り込む。先輩のせいで気分は最悪だが、あの女の子が看病してくれるならいいか、そんなこと考えていると、ふっと気になることが頭にちらついた。あの子は一人で自分を運んだのかとか、まあ、手伝ってもらったとしてもサークルで友人をあまり作ってないおれの家なんて知ってるやつは直人くらいで、でもあいつはおれが誰かに家を知られるのを嫌いなのは知ってるはずだから教えないだろう。それに、なんで電気が点いていないのかとか。
「お水、どうぞ」
真央は女の子の顔を凝視する。暗闇か支配するこの部屋で、人の形をした影を真央はただ見つめる。なんで、顔がわからないんだろうか。
「お前、だれ…?」
「え、どうゆうことですか?」
女の子の動きが止まる。なぜか空気も止まっている気がする。真央はゆっくりと上半身を起こした。不安からか、額に汗が吹き出ているのがわかる。布団を握る手に力が自然とこもる。
「誰なんだよ」
「…」
沈黙が部屋を満たす。外では風が吹いているのか、窓から差し込む月明かりが雲の切れ間によってちらちらと変動している。すると女の子が肩を揺らしてくつくつと笑いはじめた。
「なかなか、人には馴染めんようだな」
「な、に…!?」
雲がなくなったのか、まっすぐに差し込む月明かりに女の子であったものが後ろから照らされる。が、真央が見たものは月明かりに反射する長い金色の髪と暗闇で怪しく光る紫色の瞳だった。そして意識が消える前に嗅いだ甘い匂いが仄かに香っていた。
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