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「そういえばもうすぐ夏祭りだね」
「もうそんな季節なのか。だからこんなに暑いんだな」
「あの、それで誠治君は誰と行くのかな?」
「え? お前行かないのか?」
「え? 行くの?」
「え? 駄目?」
「いや、いいけど」
「今時、男女二人で祭に行ったからどうとか前時代的なことは言われまい。安心しろよ」
「いや、うん。そうだね」恵那は、はははと笑った。
俺は未だに彼女が掴みきれない。
授業が終わり、俺はまっすぐ帰宅した。ソフトボール部に入っている恵那とは違い、俺は帰宅部だ。放課後に運動して、夜には吸血鬼も狩る元気など俺にはない。しかし、何か暇つぶしを考えておくのも悪くはない。いつかこれが生業になる日が来るのだ。大学に進学するつもりは、今のところなかった。
自分の部屋に鞄を置くと、練習用のウェストポーチを取り、地下に降りる。父が引退した今、四十坪はあるトレーニングルームを使うのは俺だけだった。ウェストポーチを置き、まずは基本となる体術の練習を始める。吸血鬼の骨格は人間と酷似している。故に人に効く技は、吸血鬼にも通用する。
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