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「さあ、大人しく縄に縛られて下さいな♪」 雲によって隠れていた月が姿を現した事により眼前にいる者の姿が見えた。 歳は二十代前半位であろう、長い総髪を後ろの下位置で縛っている、女顔負けの白い肌に美しい顔立ち、喉仏が見えなければ男と分からなかっただろう。 優しげな笑みを顔に張り付けているが、物乞いの男は目の前に鬼でも現れたかの様に尻餅をつき後ずさる。 「あれあれ?、どうかしましたか」 心配そうな顔をしてゆっくり近付いてくる男。 「ッッ……」 一瞬、更に顔を青くさせた物乞いはいつも使う懐の小刀を取り出して眼前の男目掛けて突き上げた。 「う゛わああぁあぁぁあああぁあぁぁあああぁあぁぁあああぁあぁぁあああぁあぁぁああ!!!!!!!!!!!!!」 窮地に追い詰められた男の絶叫が響きわたる。
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